Medical News Japan

中国:医薬品広告に規制強化も実効性は?

「無政府状態」医薬分野の広告に規制、効果は?-中国
サーチナ 2009/02/23より


  最近、国家広電総局、国家工商行政管理総局、衛生部、国家食品薬品監管局、国家中医薬局が共同でテレビ・ラジオの医学番組や広告で俳優や有名人が医者や患者を演じることを禁止する通達を出した。

  北京地元紙の京華時報は最近、薬品のテレビコマーシャルで名前を使い分けて専門家に扮していた俳優、様々な病気に罹った患者のふりをしてコマーシャルに出演していた女優について論評、批判した。この女優は複数のコマーシャルで、肺、肝臓などの臓器に病気がある患者を演じ、宣伝される薬品を服用してから「治った」と語っていたという。

  先月には、あるネットユーザーが山東省の複数のテレビ局の複数の番組で、同一人物が名前を使い分けて専門家として出演していることを指摘した。「テレビコマーシャルで同じ顔だが、名前の違う詐欺師が現れた」と題するこの書き込みによれば、同じ人が、医学教授になったり、保健協会の理事になったりしているという。こうした「ニセ専門家」は現在までに12人いることが分かった。まさに中国国内には現在、ニセ薬や危険な薬品が広く出回っており、安全性の問題も多発している。虚偽広告をなくさなければならないとの声が高まっている。

  弁護士は広告法などの法律によれば、医療などの製品の広告に学者が出ることは許されておらず、俳優が専門家に扮することは詐欺の疑いがあるという。しかし、巨額の利益によって駆り立てられている医療関連業者(広告主)は、大金をはたいて有名人や俳優の顔を借りて製品宣伝を行う。一般国民は信用している有名人や俳優が推薦した薬品や医療器械を買うようになりがちで、よって事故が起きる確率が高まる。有名人や俳優本人の名誉と信用は大きく傷つけられることにもなる。

  北京市消費者協会の発表によれば、2007年に消費者が訴えた11種類の苦情のうち、有名人や俳優が出演した虚偽広告が非常に注目されている。有名人や俳優が出演した医療サービスと薬品の広告は、往々にして治療効果を誇張しているとも指摘されている。法に反して保健食品の治療効果を宣伝する有名人や俳優もいる。数多くの保健食品の広告は治療効果を宣伝している。その中で、有名人や俳優が出演した保健食品の広告が量的にも多いという。しばしば落とし穴が設けられているこのような広告が消費者をミスリードするものとして問題になっているわけだ。俳優や有名人は事実上、悪徳業者のさくらとして、悪徳業者と一緒に消費者を陥れるのに一役買ってしまっていることになる。

  俳優や有名人が名誉や信用が失われる危険に晒され、不良な医学番組や広告に出演する原因は、巨額な報酬という誘惑なのだろう。ややもすれば7桁(100万元=約1500万円)に達するとも言われる報酬は、あまりにも大きすぎる。広電総局のこの禁令は一部の有名人や俳優の財源を断つ、ということになるかもしれない。

  この禁令はまぎれもなく、中国の医療や健康などに関する広告の「無政府状態」を示している。「道高一尺魔高一丈」(正義の力は強いとはいえ、邪悪の力はそれ以上強くなる場合がある)という中国の諺が示すように、法律は絶えず改善されているにも関わらず、法律や禁令に対する違反行為はいくら禁じても減らない。法律が完備するとともにその隙に乗じてうまく乗り越える手段も更新される。

  「ニセ専門家」が演じる広告の氾濫の原因は広告を監視・管理する主体の執行能力の欠如にあるだろう。今度の禁令がなくても、「ニセ専門家」が演じる広告は現行法律(広告法)に違反するものだ。しかし、広告を監視・管理する主体としての工商行政管理総局は、目下中国の社会環境の中で、特にメディアの広告分野にはなかなかメスを入れられない。広告が露出されるプラットフォームとしてのメディアに対し、工商行政管理総局の力は相対的に弱いからだ。

  長年、政府は広告、特に医学や薬品の広告に対する法規を多く出している。それは法規の執行に問題がある一方で、現在の中国のマスコミ業界の特殊構造にも問題があるともいえる。ますます厳しくなってきている競争環境で生き残るために、テレビ局やラジオ局などのマスメディア(特にあまり実力のない中小マスメディア)は、追い詰められて無謀なことをするしかなくなる。地方の小さなテレビ局がより多くの違法広告を放送しているのがその証だ。

  1989年に「三九胃泰(エキス剤)」という薬品を宣伝するため、有名人が出演した広告が初めて登場して以来、20年経った。中国の有名人や俳優が広告に出演する現象はますます普遍的な現象になってきている。しかし、中国の有名人における広告市場は玉石混交で、ルールもない。その結果、有名人が出演した法律違反の広告が時々糾弾されることになる。専門家は、経済と社会の発展に比べ随分立ち遅れている、1994年から実施されている広告法の改正を急ぐよう呼びかけている。広告に出演する代弁者をスポンサー、広告の業者、広告の発表者と合わせて広告法の中に組み入れるべきだという。

  広告に出演する有名人や俳優は広告の業者と並んで責任を負う主体になれば、広告に出演する前に、有名人や俳優はコストの問題を考慮に入れなければならない。100万元もの報酬を貰えても、虚偽広告を発表してしまえば、民事責任のための賠償で破産する恐れがある、というような環境になれば、あえて虚偽広告に出演する有名人や俳優はいなくなるだろう。

  しかし現時点では、虚偽広告に出演する有名人や俳優はいかなる法律の責任を負わず、せいぜい名誉と信用が落ちるだけだ。まさにこのような法律の空白が存在するため、一部の弁護士が全国人民代表大会(全人代)に広告法改正に関する要請を出し、低劣な製品の代弁者としての有名人や俳優などは必ず法律上の責任を負うべきだと指摘しているわけだ。

  今度の禁令も、その効果を疑問視する声がある。今度の禁令は広電総局などの政府部門が打ち出した世論対策だと指摘する向きもある。中国の特殊な行政体系のもとで、広電総局は傘下の地方テレビ局、ラジオ放送局に対して人事や経営などへの実質的支配権を握ってはいない。そのため、広電総局の命令が行き届かないことが多い。

  総じて、有名人や俳優などが出演する虚偽・誇大広告を根絶するには「いかなる薬品や医療器械や医療サービスなどの広告を出してはいけない」という禁令を出せばよいかもしれない。さらに、中国における医療制度改革が進むにつれて医療サービスや薬品から暴利を得なくなれば消費者を悩ます虚偽・誇大広告の姿も消えてしまうかもしれない。

  写真はイメージ。北京の薬局のようす。(執筆者:祝斌・北京在住の社会問題ウォッチャー)

---------------------------------
「無政府状態」医薬分野の広告に規制、効果は?-中国
サーチナ 2009/02/23(月) 14:08

2009年02月24日:韓国・中国・アジア:skyteam2007

トラックバック

トラックバック
このエントリにトラックバックはありません
このトラックバックURLを使ってこの記事にトラックバックを送ることができます。 もしあなたのブログがトラックバック送信に対応していない場合にはこちらのフォームからトラックバックを送信することができます。.

Comments

コメント (0)

Add coments

このアイテムは閉鎖されました。このアイテムへのコメントの追加、投票はできません。
Navigation
最新の記事
過去の記事
Categories
General
newcat1
がん
アメリカ
イギリス
エイズ
エッセイ
オーストラリア
カナダ
ストレス・メンタル
スポーツ
メディカルツーリズム
ヨーロッパ
再生医療
出産・妊娠
医学部
医療訴訟
呼吸器・たばこ
多発性硬化症
女性
心臓・高血圧
感染症
手術
整形外科
生命倫理
看護
睡眠
移植医療
美容
肥満・メタボリック症候群
脳卒中
製薬ビジネス
認知症・アルツハイマー病
韓国・中国・アジア
New Topics
04/27:中国:棺おけセラピー?
04/17:韓国:不景気が病気をふやす
04/08:韓国:通貨安とメディカルツーリズム
02/24:中国:医薬品広告に規制強化も実効性は?
02/20:タイ特集:世界経済低迷が病院経営に余波
Login
Search
Links
Nucleuscms.org
Nucleus CMS Japan
Nucleus JP forum
Nucleus JP wiki
RSS
SKITEM DESIGN WORKS

Powered by Nucleus CMS. Created by SKITEM DESIGN WORKS.